第2話<疑い> | ||||
「母さん…本当に?」 橋川君が私のお兄ちゃん…? 「…ごめんね、ごめんね…」 和美は美咲に謝り続けた。 「…母さんが悪いんじゃない!! 浮気をしたのは…父さん。母さん、嫌だよ。もうここにいたくないよ…」 この事が近所に知れ渡ったら…恥さらしになるかもしれない。 そんなところに居たくなかった。 「でもお父さんを一人置いていけないわ!」 確かに家族の一員… でも美咲にとって父はもう父親ではなかった。 「母さん!しっかりしてよ。私達は裏切られたんだよ?」 「そりゃ…父さんだって魔がさすことってあると思うわ…」 「何言ってるの?! 嫌だよ。私…そんなお父さんなんか…いらないよ―」 パシッ 美咲は頬に手を当て、母を睨んだ。 「どうして?」 母の手がまさか私の頬を打つとは― 美咲には見当がつかなかった。 「お父さんは今までちゃんと貴女を育ててきたでしょ?! 幸せだったでしょ?!いらないなんて言わないで…お願いよ…」 幸せにして 美咲にはそれが嫌でしかたなかった。 偽りの幸せ― 「…どうかしてるよ」 美咲は何も言えず、二階に上がっていった。 母は狂っている。 父を愛しすぎて狂ってる。 どうしても父を守りたいらしい。 母は父が浮気をしていたことを知りながら私を育ててきた。 そんなニセモノの幸せなんていらない。 今までの幸せな時間だってニセモノだったんだ…。 翌日、学校に通う美咲。 本当に家族に絆があるのかって疑うくらい。 ものの見事に家族関係は崩れ落ちていくことがわかる。 食事は無言が当たり前なのだ。 「美咲!」 振り返るとそこには詩織がいた。 心が休まるのは学校だけ― 友達の前だけ、美咲はそう思っていた。 「あ、詩織。おはよう」 美咲は詩織に笑顔を向ける。 「美咲、本当に…?本当に、橋川君と付き合ってるの?」 思いも寄らない偽の噂。 「…え?」 不幸は重なるもの? これは運命か、それとも罠か― 「何言ってるの?詩織。 私誰とも付き合ってないよ?詩織が一番わかってるじゃない。」 「もう昔から付き合ってるって…そうだったら私だってわからない…。」 「橋川君は高校入って、初めて会ったんだよ?!」 美咲が見ると、詩織の目には涙が浮かんでいた。 「今の私に何言っても美咲の言葉信じられない。 この前だって仲良く二人で喋ってたんだし…ごめん」 そう言って詩織は美咲の前から去って行ってしまった。 彼女が本当に橋川が好きだった事がよくわかったのはいいが、それと同時にそんな変な噂を流す犯人に見当がつかないのが嫌だった。 とりあえず、教室に行こう。そこからだ。 美咲は教室に向かった。 教室についた美咲を襲ったのは女子の冷ややかな目だった。 橋川の人気が身に染みてわかる。 橋川は美咲の近くに寄り、こう言った。 「あ、美咲。ごめんね、俺達のことばれちゃった」 俺たちのこと―? 異母兄妹のこと…?! 嫌だ…バレたくない… 「え?橋川君…何言ってるの?」 いや、冗談だと言えば皆信頼してはくれないだろうか… 「今更隠す事なんてないじゃないか」 「…何のこと言ってるの?!」 彼は当然のように言うだろう。 俺達が― 「僕達が付き合ってる事だよ」 美咲は拍子抜けしてしまった。 兄妹のことではない。 でも喜べない。 この噂で詩織の信頼を失った。 兄妹なんだから…ありえない。 クラスの人間は私達が兄妹だとは知らない。 それを言おうとも思わない。 また不気味な笑顔が見える。 この不気味さは私にしかわからないのだろうか。 美咲は悲しくなった。 そんなことを思っていると橋川に抱き寄せられた。 それに女生徒が「きゃ」と頬を染めるのを横目で見えた。 どこがいい?この怖い男の― 「何がしたいの?」 涙が美咲の頬を濡らした。 詩織が自らの元を去り、たぶんこれから全校生徒の女生徒から嫌がらせをされることを考えた。 「僕は君のお父さんがとっても憎いんだよ」 「貴方のお父さんでもあるでしょ…」 「それは言って欲しくなかったな。 でも本当にあんな父親は持ちたくないよ。 だからね、あいつをどんどんと不幸にしていってあげたいんだ」 「私を不幸にしても意味ないじゃない」 「ん?何言ってるの、美咲。君は自分が関係していないとでも?」 「浮気をしたのはあの人…」 そう言うと橋川は美咲を体から離し、目を見た。 「美咲、もっと人の気持ちをわかる人間になろうね」 美咲の頬に橋川の右手が触れた。 その右手を見てぞっとする。 手を払い除けて美咲は教室を出た。 もう嫌だ。どうして平和でいられないの―? |
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第三話…充の復讐始動しっちゃいますw 充の復讐の標的はまず美咲ちゃんなんです…。 そして、新たに一人、役者が登場します! 越川英次です。同級生の男の子で、美咲に恋心を…★
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