第2話<教師> | ||||
その翌日。 いつものように学校に通っていた朱里は悩んでいた。 本当に自分は結婚していいのだろうか。 自分の為にはならないとはわかっている。 しかし大好きな父の喜ぶ顔が…見たい。 喜ぶ顔…?喜ぶのかな… でも路頭に迷う社員がいる。 私にかかっているんだ。 「朱里!」 小声で朱里を呼ぶのは隣の席の小川慶子。 朱里の親友だ。 「ん?」 朱里は慶子の方を見ると、目で前を見るようにと促された気がした。 そして前を見ると先生が朱里の方をじっと睨んでいた。 長身でメガネをかけた教師。 生徒からは怖がられ、授業は常に静かな教師。 やば…この人の授業だったか。 この時間、生物の授業をやっていたのを朱里は忘れていた。 担当の河邑豊という教師はとても怖いというのに… 「次回からはこう言うことのないように」 普段の行いがいいせいか、朱里は忠告をされただけで済んだ。 授業も終わり、朱里は河邑の恐怖から安心しきった。 「ねぇ、朱里どうしたの?今日おかしいよ」 慶子が授業中の様子を見てそう問いかけてくれた。 「…うん。ちょっと、家の事で…」 「そっか。相談したくなったら即言ってよ?」 朱里がある会社の娘だというこを知る慶子はそれ以上深くは聞かなかった。 朱里にとって慶子は心の休まる居場所だった。 「よお朱里。今日はどうしたんだ?いつもはちゃんと そう言うのは小松竹雄。 朱里の親友の一人だ。 小松の言葉を聞いた慶子は即座に小松の頭を叩いて少し遠くまで連れて行った。 たぶん、それは朱里を気遣ってのことであろう。 朱里、慶子、小松の3人は幼馴染でずっと仲良しだ。 私の悩みを今この二人に打ち明けたら、彼らは何て言うだろう? 私が父を好きなことを知っている彼らなら結婚しろと言うだろうか。 それとも父と同じように断固反対なのか。 幼い頃からある会社。 私が守れるものなら守りたい― 何度朱里が結婚をすると言っても朱里の父・正志は頑固に聞かなかった。 『お前は結婚させん』 ただその一言で片付けられてしまう。 確かに無謀なこと、だけど少しぐらい私の話聞いてくれてもいいじゃない? そうして数日が経ったある日。 ピンポーンと沢井家のチャイムが鳴った。 朱里は玄関に向かうと、そこには結婚の話を持ちかけた河邑家の人間だという事に気付いた。 「あ…君、沢井さんの娘さんかな?」 「はい。あ、貴方はこないだの…河邑さんですか?」 若く感じた。 自分の父親よりも若そうと思えるほど若々しく、スリムだ。 父とは本当に正反対のような人。 「お、名前知っててくれたんだね。 おじさんはね、河邑啓志って言うんだ。一応会社社長なんだよ。よろしくね」 だが、この啓志という人は50代だという。 父と同世代ぐらい…なら私の相手も私と同じくらいなんだよね? ふと会ったこともない相手のことが気になった。 朱里はそれよりも、とこう思う。 この人…私の事何歳だと思ってるんだろう。 少し疑問に思ってしまった。 15で、まだ結婚できないこと知ってる? いや、その事よりもとにかく… 「私、心の準備はできてます。 誰とだって結婚しますから!会社に融資してください。お願いします」 朱里は啓志の目を見続けた。 それは強い意志の表れ。 その時だった。 朱里の背後から母親の声がした。 「まあ!朱里、お客様じゃないの。すいません…どうぞ中へ入ってください」 そう言い、朱里の母・真里は啓志を家の中へと招き入れた。 朱里は真里と啓志の後に続き、リビングへと向かった。 元からリビングにいた正志は啓志が現れたことに、とても驚いていた。 「河邑さん…どうして?こないだ断ったはずです」 「今、娘さんの意思を聞きました。」 すると正志は朱里を見て「また変な事を!」と言う。 朱里にとって、それはもう決めた事だった。 『結婚する』 「とりあえず二人を会わせてから考えていただけませんか。 私だって御社を助けたいんです。お互い気に入れば問題はないでしょう?」 「河邑さん!そういう問題じゃない。ウチの子はまだ15なんです。」 「結婚は16からですよ。今年できます。」 「まだ若すぎる、まだ嫁になど出せません」 「情だけじゃ1つの会社を助けられないんです! 社員が納得するようなものが必要なんです! 子供達には酷ですけど…それが会社間の決まり事というものです。」 その啓志の言葉に朱里は納得した。 この人は本当にうちの会社を助けようとしているんだ。 納得するようなもの、それが"結婚"。 夫婦になれば会社が助かる… |
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第三話…相手と対面ですよ!ムフフw 何かこう言うのってドキドキしますよね…若干お見合い的な。 でも朱里は大きなもの背負ってますからね。
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