第1話<訪問者> | ||||
「あなたの会社はもう…―」 私は聞いてしまった。 「他に助かる道はありませんか?! この会社が潰れてしまったら…たくさんの社員が路頭に迷ってしまう…」 私の父が築いた会社が倒産寸前だという事を― 「…ただ一つだけ、私が助けられる道があります。」 私はいつも言われていたのに… 『お父さんにお客さんが来た時は絶対にこの部屋に近寄るな』 私は初めてその約束を破った。 「それは何ですか?!教えてください」 沢井朱里15歳。 今年高校に入学したばかりだ。 彼女の父親は地元では少々有名な食品関係の会社を営んでいる。 しかし、最近になって経営が傾き始めている。 それに朱里も薄々気付いていたところだった。 「お父さん」 ふっくらした父がソファにドンと座っている。 朱里は自分の家のリビングで父親に話を持ちかけていた。 「どうした?」 朱里の父親・正志は新聞に目を通しながら朱里の声に返事をする。 「私、別にいいよ。 「聞いてたのか?!」 驚いた正志は持っていた新聞をぐっしゃぐしゃにしてしまった。 朱里は何も言えずにいた。 父と話していたあの人が言っていた。 『ただ一つ、御社を助ける方法』 何なんだろう? たった一つの助かる道。 『我社が融資いたします。タダでとはなりませんが』 融資?…ああ、この人良い人なんだ! お父さんの会社を本気で助けてくれる…! だけどタダではない。 会社と会社との間ではそう簡単に物事は進まない。 娘の朱里としてもそれはよくわかっていた。 『貴方には娘さんがいらっしゃいますよね? うちの息子と結婚してくだされば、もう身内同然。喜んで融資いたします。』 …私のこと? 私が…このおじさんの息子と結婚すれば…融資… このおじさんは父がこの条件をのまないと思ってるからこういうことを言うのだろうか。 昔から父は私を大切に育ててきた。 こんな形で嫁に出す事はしない。 でもできるなら力になりたい。 この条件のんでやろう。 私はただこの会社を救いたいのだ。 大好きな父を…悲しませたくないから― 「結婚は絶対にさせん!」 「いいえ、します」 朱里が反抗する。 「結婚させんと言っているだろう!!」 二人はいつしか意地になっていた。 無理もない。 娘の今後の人生を左右することだ。 そんな時だった。 ダンッとテーブルを叩く音…それは正志の座るソファの前にあるテーブルだった。 正志が見ると魔王だと思うほど怖い…女性… 「二人とも、何の話してるのかしら?私聞いてないけどいいんでしょうか?」 それは朱里の母・真里。 表面は笑顔を浮かべているのだが、内面は相当怒っているのだ。 「この話は終わった」 正志が強制終了させようとするのに、朱里は納得しない。 「終わってないよ!」 朱里は父に食い下がった。 するとまたさっきと同じようにテーブルを叩く音… 真里は起こったまま言う。 「とにかくお話していただけますでしょうか?」 正志は怖くなったのか。 話を始めた。 「河邑さんとこから、条件付の融資の話が来た」 「よかったじゃない!」 「よくない!」 真里の喜びとは逆に正志は怒っている様子。 母の疑問に朱里が答えを出す。 「この家と河邑家が身内になること、それが条件」 それでも真里はわからなかった。 「どういう事よ?身内って…?」 すると正志が口を開いた。 「朱里を嫁に出せと言っているんだ」 真里は驚き、手で口を覆う。 朱里を嫁に出すか、会社を倒産させるか。 「だから断った。」 「私は嫁に行くよ!問題はないでしょう?」 その言葉に正志は反論する。 娘の考えが何て軽いんだとも思った。 結婚はそんなに甘いものじゃない。 「問題は山ほどある!会った事もない男と結婚など絶対にさせん」 「そうよ…会った事もないのに…何だかまるで政略結婚のようだわ」 正志の言葉に真里は同意した。 朱里は真里の言うことはわからなくもなかった。 政略結婚…確かにそうかもしれない。 「じゃあ会わせてくれればいいじゃん!」 朱里はそう言い残してリビングを後にした。 「朱里?!」 「いい、結婚はさせんのだから放っておきなさい―」 |
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第二話…朱里ちゃん悩みます…。 やっぱり結婚していいのかなぁ、って。 自分で結婚するって言っておいて…やっぱり自分不安なんだよね。 親が言うように会ったこともない相手とって言うのが。
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