第49話<修復>

 翌朝、充の目が覚めて横でスヤスヤと眠る美咲を見て安心する。
 昨日のことは夢ではないと再確認できる。

 美咲が起きないように注意しながら抱き締め、軽く口づけした。

「んーっ」

 近くで男の声が聞こえた。
 振り返り見れば健司だ。

「…何だお前…ら?そこで寝てたのか…」

 あくびをしながら質問に答える。

「はあぁぁ…そうだよ。
 いいじゃん4人一緒に寝れば何も起こらないだろ。」

「まあそうだけど…」

「…それにしても俺、詩織ちゃんの気持ち真剣に受け止めることにした」

 充をまっすぐ見た。
 健司の気持ちを充も理解してくれたようだ。

「そうか、よかったな」



 充と健司がリビングに向かうと妙子がいた。

「妙子さん…朝早すぎですね」

「あら、そうですか?年寄りは早起きしてしまうものです。
 それにしても、あのベッドでの寝かた問題ありですよ。
 ちゃんと男性は男性同士で寝て下さい!4人一部屋だからっていけませんよ」

 妙子は真剣に怒っていた。

「それはごめん、妙子さん。特に意味はないから気にしないでよ」

「そんなことはできませんよ」

 妙子は「旦那様に言いつけますよ」等とぶつぶつ文句を言いながら朝食を作っている。



 少しして美咲と詩織が起きて、リビングへやってきた。

「あ、妙子さん…朝早くから…」

「皆さまの為なら頑張りますよ」

 美咲に笑顔を向ける。

「本当、申し訳ないです…」

 頭を下げる美咲に妙子は笑って「召し上がってください」と言った。


 テーブルで4人朝食を摂る。
 何だか不思議な感じだ。
 全員がぎこちない。
 …いや、ただ一人を除いて、だった。

「なあ、美咲。俺詩織ちゃんと付き合うわ」

 ええ!
 唐突だなぁ、と思うがそれが健司だ。

 詩織を見れば視線をそらして恥ずかしそうにしている。

「詩織おめでとう」

「あ、ありがとう…そっちこそ…よかったね美咲」

 詩織は美咲に笑顔を返した。

 その言葉に美咲も少し恥ずかしくなる。
 そんな美咲の姿が可愛いと思う充だが、それをいじりたくなるのも充。

「何恥ずかしがってるんだよ」

 充は美咲の顔で遊んだ。

「な゛!何すんのお兄ちゃん―」

 兄妹であることを自らの体にしみ込んでいる…。
 美咲が少し沈んでいると、充がふと笑った。

「まぁさすがにお兄ちゃんって呼ばれるのはダメだよなー…徐々に直していけばいいさ」


「あ、そういえばさ…俺らは出来上がったけど
 一組カップル出来そこなったのいたよな…お前のせいで」

 健司が横目で美咲を見る。
 うわぁ…。
 美咲は目をそらした。
 伸也…忘れてた…絵理香って子…怒ってるよねぇ…やっぱり。

「私、今日伸也君に会いに行こう…謝らなきゃね…」

「俺もついてくよ」

 充が言うと健司もついてくと言う。
 "だっておもしろそうじゃん"

「何か健司君って性格悪くなってきたね…」

 詩織が呟いた。
 すると…

「え、知らなかったの?本当に俺と付き合っていける…?」

 健司は当たり前のように言った。

「…頑張るわ…」

 二人の会話が面白く、美咲は笑って見ていた。
 この二人ならちゃんと長続きするよ…。





 海についた。
 サーファーが群がる浜についたが伸也の姿が見えない。
 やっぱり傷ついてしまったのか…美咲がそう思った時。

「おい…あそこで凹んでる奴じゃねぇのか?」

 充が言った。

「あ…そうだ」

 美咲は伸也のもとへ近寄った。

「あ…あのー…伸也君…」

 伸也は無言のままだ。
 呆然と浜を見つめている。

「伸也君…絵理香さんって今どこにいるの?会いたいの」

 伸也が顔をあげた。

「…バイト。そこらへんでトウモロコシ焼いてるはず…
 俺が何を言っても全然…聞く耳持たないって感じで…助かる」

 伸也は力なく微笑んだ。

「私のせいなんだから…気にしないで」

 美咲はトウモロコシ屋を探した。
 幾つか店を回って、それらしき女の子と目が合った。

「あ」

 後からついてきた充は美咲の手を握った。

 二人は絵理香の目の前に立ちはだかった。
 その後ろで健司と詩織も手を握って見守っている。

「絵理香さんですよね?
 この前のこと…誤解なんです。
 私が勝手に伸也君に抱きついちゃっただけで―」

「いえ…何となくわかってるんです…」

「じゃあ、どうして?」

「こんなこと言うのもなんですけど…
 私伸也のこと好きで…ちょっと嫉妬したのかな…」

「やっぱり!」

 美咲は微笑んだ。
 絵理香は驚いて美咲を見た。

「そんな気がして―二人は想い合ってるって」

「…まさか。伸也はモテるし―」

「ううん、違う。
 ずっと絵理香さんのことを想ってた、今でもそう。
 だから、誤解を何度も解こうと頑張ってたんじゃないかな?」

 私が悪いんだけど、美咲は心のどこかで思った。

 絵理香はすっと頬を染めた。

「私、ちょっとぐらいトウモロコシ焼けると思うから
 伸也君に早く会いに行って来てよ。私恨まれちゃうからさ…」

 絵理香は微笑んで、すぐに伸也の元へ行った。
 伸也はサーフィンをして、海から上がって来たところだった。

 トウモロコシ屋からその様子が見える。
 絵理香が何かを話し、伸也は驚いていて…伸也は絵理香をぎゅっと抱きしめていた。

 ああ、よかった。
 美咲は思った。



 健司の別荘への旅行は4人には思い出の詰まったものとなった。

 卒業はあと半年―。



第50話…幸福生活…
高校生活はあと半年となった。
美咲と充の生活はとても幸せで甘かった。

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